人材派遣の歴史
年月 | 内容 |
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1947年 |
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1966年 |
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1969年 |
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1973年 |
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1976年 |
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1981年 |
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1984年 |
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1986年7月 |
労働者派遣法施行 1986年当時の人材派遣適用対象業務一覧 |
1986年10月 |
3業務が追加され、派遣適用業務が16業務に 1986年10月に追加になった人材派遣適用対象業務 |
1996年12月 |
10業務が追加になり、26業務に 法令で定める人材派遣適用対象業務一覧 |
1999年12月 |
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2000年 |
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2004年3月 |
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2006年4月 |
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2007年 |
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2012年10月 |
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2015年9月 |
労働者派遣事業の許可制への一本化 専門26業務(28業務)に関わらず、派遣期間が原則上限3年 派遣労働者の雇用安定措置の義務付け 派遣労働者への計画的な教育訓練やキャリアコンサルティングの義務づけ 政令28業務の撤廃(2015年改正) |
1986年当時の人材派遣適用対象業務一覧(専門13業務)
- ソフトウェア開発
- 取引文書作成
- 調査
- 受付・案内・駐車場管理
- 建築物清掃
- 秘書
- 事務用機器操作
- デモンストレーション
- 財務処理
- ファイリング
- 建築設備運転・点検・整備
- 添乗
- 通訳・翻訳・速記
1986年10月に追加になった人材派遣適用対象業務(専門16業務)
- 機械設計
- 放送番組など演出
- 放送機器など操作
法令で定める人材派遣適用対象業務一覧(専門26業務)
- 1号 情報処理システム開発
- 2号 機械設計
- 3号 放送機器操作
- 4号 放送番組などの制作
- 5号 機器操作
- 6号 通訳・翻訳・速記
- 7号 秘書
- 8号 ファイリング
- 9号 調査
- 10号 財務
- 11号 貿易
- 12号 デモンストレーション
- 13号 添乗
- 14号 建築物清掃
- 15号 建築設備運転など
- 16号 受付・案内・駐車場管理
- 17号 研究開発
- 18号 事業実施体制の企画・立案
- 19号 書籍などの制作・編集
- 20号 広告デザイン
- 21号 インテリアコーディネーター
- 22号 アナウンサー
- 23号 OAインストラクション
- 24号 テレマーケティングの営業
- 25号 セールスエンジニアの営業、金融商品の営業
- 26号 放送番組などにおける大道具・小道具
政令28業務の号数表示の変更(2015年改正)
2015年9月改正法により期間制限の考え方が変更したため、従来の派遣法で定められていた「政令28業務」という分け方が撤廃されました。
人材派遣業界の市場の変化
1999年改正「適用対象業務の原則自由化」、2004年改正「製造派遣解禁」が労働者派遣の市場拡大の大きな要因となったが、2008年のリーマン・ショック後、製造業を中心に派遣切りや雇止めが相次ぎ、それに伴う規制強化により、業界全体が急速な縮小傾向となっている。
人材派遣業界の成長率
派遣労働者の推移
法律によって変化したこと
規制緩和の時代 / 専門職の Temporary から雇用調整の手段に(〜2007)
1986年に労働者派遣法が施行されてから、専門業務の臨時的・一時的な労働力としてビジネスシーンに定着し、一定の評価を得た派遣労働は、バブル崩壊後、民間の活力を引き出すという国の基本方針のもと、労働市場の規制緩和推進が加速。数次にわたる法改正が行われ、労働者派遣を取り巻く環境や役割は大きく変化しました。
定められた専門業務のみ派遣を許されていたポジティブリスト方式に変わり、禁止する業務以外は派遣を許されるネガディブリスト方式が導入されたことで、適用業務が大幅に広がり、それに伴う専門系派遣会社(物流、金融、医薬、旅行、販売、サービス、医療など)が乱立。派遣先企業にとっても派遣の価値観を大きく変える要因となりました。その結果、専門的な業務を担うはずだった派遣労働者は、安価な労働力と、企業の調整弁として遣われることになったのです。
それでも、1999年時点での法改正では、自由化業務に対し1年の期間制限を設けたことで、労働者派遣本来の「臨時的・一時的(temporary)」な労働力の需給調整という部分を残した形を取っていますが、自由化業務全ての期間制限が最長3年となった2007年改正をもって、施行当初の労働者派遣法の目的であった「臨時的・一時的(temporary)」「専門的」なものに限るという根本精神は、法律で語られなくなりました。
規制強化の流れ / 世界的金融危機から格差問題、規制強化、そして労働者保護へ(2008年〜)
製造派遣の2009年問題を直前に控えた2008年9月、リーマン・ショックに端を発した急激な景気の悪化を背景に、「派遣切り」や「雇止め」、大手派遣会社の悪質な違法行為の発覚が相次ぎ、大きな社会問題となりました。その年の暮れに開設された「年越し派遣村」はひときわ世の中の注目を集め、派遣=不安定な雇用=貧困という極めて否定的な派遣労働のシステムが強調され、規制緩和の闇をあぶりだす結果となったのです。
この事態を重く見た国は、行き過ぎた緩和を再度引き締めることを急務として、政治のパワーバランスの変化(政権交代)の中で法案が変容しながらも、さまざまな規制を強化する方向性を打ち出し、2012年10月の法改正に至りました。今改正は無期雇用への転換推進、派遣労働者の教育訓練、派遣先労働者の賃金水準との均衡考慮など、労働者保護を強く意識した内容が特徴で、法律の名称も「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護(旧・就業条件の整備)等に関する法律」となりました。
規制強化の収束 / 派遣業界の健全化と派遣労働者のキャリア形成へ(2015~)
2008年のリーマンショックからの規制強化のなかで、次に問題となったのは派遣会社そのものでした。従来、派遣事業には届出制の特定労働者派遣事業者と、許可制の一般労働者派遣事業者の2種類の派遣会社が存在。とくに、1999年改正のネガティブリストからポジティブリストへの派遣可能職種の規制緩和を境に、一気に特定事業者が増えていきました。
参考:一般労働者派遣事業者数17,735事業所、特定労働者派遣事業者数56,874事業所
(厚生労働省 平成26年度労働者派遣事業の事業報告の集計結果)
一般労働者派遣事業者の3.2倍もの数を誇る特定労働者派遣事業者は、主に中小の派遣会社。届出だけで開始できるという気軽さもあり、会社そのものが適性を欠いていたり、法律に疎く、派遣労働者の待遇にも問題が多かった事実を受け、2015年9月の法改正では、国はますますの規制を強化し、業界全体の健全化を図りました。改正後半年で行政処分を下された派遣会社は915社にものぼり(内訳 旧一般:10、特定:905)、国の本気を見せつけたかたちとなりました。
一方、正社員雇用促進が限界に達した現代において、非正規雇用に対しての雇用安定化、処遇改善は必須であり、そのためのキャリア形成支援「段階的かつ体系的な教育訓練とキャリアコンサルティング」を派遣会社の責任とし、義務を負わせました。今改正の狙いはまさにこのキャリアアップ措置であり、2012年改正より一歩踏み込んだ労働者保護だと言えるでしょう。
派遣会社の役割と責任はより明確化され、高いハードルを課したことで、規制の強化は一旦収束、労働者派遣業界は成熟期に入っていくと思われます。